「書類を全部揃えて申請したのに、なぜか審査が長引いている」「以前は問題なく通っていたのに、今回は1年更新しかもらえなかった」――法改正、こういった相談をいただくことが本当に増えています。
何かが変わった。そう感じている経営者の方は多いと思います。
実際、経営管理ビザの審査はここ数年で大きく変化しています。
この記事では、審査がいつ・どのように変わったのか、その背景と具体的な変化の中身を解説します。
そもそも経営管理ビザとは?
経営管理ビザは、日本で会社を経営・管理する外国人に与えられる在留資格です。
会社を設立して日本でビジネスをしたい外国人経営者にとって、なくてはならないビザです。
取得するためには、事務所の確保、事業の安定性、経営者としての能力など、いくつかの要件を満たす必要があります。
そして一度取得したあとも、定期的に更新審査を受けることが必要です。
この「更新審査」の中身が、近年大きく変化しています。
どんな変化が起きているのか、まずは全体像を知りたい方は、経営管理ビザ更新の全体像をまとめたこちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
→「経営管理ビザの更新は『書類』だけでは通らない時代へ――社会保険・雇用体制・事業継続性の整え方」
審査が変わり始めたのはいつ頃か
経営管理ビザの審査が厳しくなってきたと現場で実感されるようになったのは、2010年代後半頃からです。
そして2019年の在留資格制度の見直し、さらに2025年10月の法改正を経て、審査の方向性がより明確になりました。
出入国在留管理庁は、経営管理ビザの審査において**「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」**の両面から審査を行うとしています。
「経営・管理」の在留資格に係る審査においては、申請に係る活動が在留資格該当性を有するか否かについて審査するとともに、上陸許可基準省令に定める基準に適合するか否かについて審査しています。
つまり、「経営者としてふさわしい活動をしているか」と「法律で定められた基準を満たしているか」の両方が問われるということです。
以前は書類の形式的な確認が中心でしたが、今はこの両面を実態ベースで確認する方向にシフトしています。
何が「実態審査」に変わったのか
具体的に何が変わったのかというと、大きく3つのポイントがあります。
書類の裏側にある「実態」を確認するようになった
以前は、決算書・登記簿謄本・税務申告書などの書類が揃っていれば、基本的に審査が通る時代がありました。でも今は、書類の内容と会社の実態が一致しているかどうかまで確認されます。
たとえば決算書に売上が計上されていても、実際の取引記録や入金履歴がなければ「この売上は本当にあるのか」という疑念が生まれます。書類はあくまでも実態を反映したものであるべきで、書類だけを整えても実態が伴っていなければ意味がない時代になっています。
社会保険・税金・雇用の法令遵守が確認されるようになった
日本の法律を守って経営しているかどうかが、審査の重要な判断基準になっています。社会保険への加入状況、税金の納付状況、雇用に関する法律の遵守状況――これらが審査書類の中から確認されるようになっています。
特に社会保険の未加入や税金の滞納は、審査において非常にマイナスな印象を与えます。「日本のルールを守って経営している会社かどうか」が、これまで以上に厳しく見られるようになっています。
説明できるかどうかが問われるようになった
審査の過程で、追加の説明や資料提出を求められるケースが増えています。売上が前年より大きく落ちた理由、社会保険の加入が遅れた経緯、雇用が少ない背景――こうした点について、根拠を持って説明できるかどうかが審査の通過に影響します。
「書類を出して終わり」ではなく、「説明できる状態を作っておく」ことが求められる時代になっています。
2025年10月の法改正で何が変わったか
2025年10月16日の法改正は、経営管理ビザの要件をより明確に厳格化するものでした。
改正の主なポイントは、
資本金3,000万円以上、または常勤職員を1名以上雇用していること
が要件として明確化されたことです。
ここで注意が必要なのが「常勤職員」の定義です。パートやアルバイトはカウントされません。
雇用の対象となるのは日本人・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等に限られています。
この改正によって、「従業員はいるけどみんなパートです」「外国人スタッフだけ雇っています」という状態では要件を満たせない可能性が出てきました。
今まで問題なく更新できていた方も、この改正によって要件を満たせなくなっているケースがあります。
なぜ審査が厳しくなったのか――背景にある社会的な事情
審査が厳しくなった背景には、社会的な事情があります。
経営管理ビザを悪用した事例が社会問題になったことが、審査強化の大きな要因のひとつです。
実態のないペーパーカンパニーを作って経営管理ビザを取得し、実際には別の仕事をしているといったケースが問題視されるようになりました。
こうした悪用を防ぐために、入管は「本当に経営をしているかどうか」を実態ベースで確認する方向に舵を切りました。
これは、きちんと経営をしている外国人経営者の方にとっては、むしろ「真面目にやっている会社が正当に評価される」という意味で、決して悪い変化ではないはずです。
「実態審査」時代に求められること
審査が実態ベースになったということは、逆に言えば**「実態がきちんと整っている会社は、正当に評価される」**ということでもあります。
社会保険にきちんと加入している、常勤の従業員を雇用している、税金を納めている、会社の経営記録が残っている――こうした「当たり前のことを当たり前にやっている会社」であれば、今の審査環境は決して怖いものではありません。
大切なのは、審査のために急いで体裁を整えることではなく、日常の経営のなかで実態を積み上げていくことです。
まとめ
経営管理ビザの審査は、書類の形式確認から実態確認へとシフトしています。
この変化は2010年代後半から始まり、2025年10月の法改正でより明確になりました。
審査で見られるようになったのは、社会保険・税金・雇用の法令遵守状況、会社の物理的な実態、そして「説明できる状態になっているか」という3つの軸です。
この変化に対応するためには、書類を整えるだけでなく、会社の実態そのものを整えることが必要です。
社労士・税理士・行政書士・中小企業診断士といった専門家と連携しながら、日常の経営管理体制を作っていくことが、安定した更新への一番の近道です。
経営管理ビザの更新について、社労士の視点から社会保険・雇用体制・事業継続性の整え方まで網羅的に解説したいこちらの記事をぜひあわせてご覧ください。
